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脳内桃色領域。常夏前線停滞中。
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師匠が良い夫婦の日の為に浅井夫婦書いてくれました(〇´∀`〇)
市かわゆす!

まぁ、師弟の格の差をとくとご覧下さい。弟子の拙さが笑えますよ(笑)







お姫様とは大抵扱い難いものだ。
勿論、姫君と言う範疇に入る女性が全てそんな女性である訳がない。しかし概ねこの定説は何であれ当て嵌ると思われる。
そもそもお姫様と言うのはよくもまあ、己の好き勝手にしてくれるものなのか。箱に入れるが如く育てられた環境がモノを言うと言えども、この世知辛い時代にこれ程の振る舞いは先ず出来ないだろう。
ああ、実にお姫様と言うものは扱い難い。


【コンパス・ガールは嵐を指す】


陽は既に高く、時折眩しい煌めきが揺れる水面に映り――青々とした雄大なる湖を眼下に収める湖北の地、此処小谷の城はその一角――。己が居城を語るのは如何かと思うのだが、とにかくその一角に、彼女は居た。床には足の踏み場と言う物が一切無く、散らばった着物やら帯紐やらで占領された後だった。
緋、薄桃、唐紅と敷かれた毛氈の如きそれ等を一つ一つ拾い上げ、腕に抱えたまま、先程からずっと顔を上げない彼女の背に声を掛けた。
「……あの、お市さん……?」
返事が無い。
「あの…………」
それでも返事が無い。
「あ「聞こえてますぅ!!」
そう言った彼女は漸くこちらを向くと、頬をぷうぷう膨らませて開口一番、甲高い声の文句を浴びせに掛かった。
「あのね長政さま、今わたしが何しているかぐらい見て解らないの?」
「え――」
「お化粧よ、お化粧――」
女の子にとって重要なんだからと念を押すかの様に、彼女は言葉を繰り出し続ける。
「あのね、お化粧中は真剣なの。普通、こんな時には邪魔しないものなのよ?」
「はい……すみません」
すぐ頭を下げたのだが、どうやら彼女の機嫌は直ってくれない。何か気に障る事をやってしまったのだろうか。
そんな思惑とは全く関係無く、彼女はまた頬を膨らませ、言った。
「だからぱっぱと部屋から出る! 空気読んでよねッ!!!」
慌てて部屋から飛び出すと同時に襖がぴしゃりと乾いた音を立てて勢い良く閉じられた。矢張り彼女の機嫌を損ねてしまった様だ。
ああ、どうしても自分は彼女の事になると空回りしている様でならない。祝言を上げて早数ヶ月――他家での生活に慣れる為にとあれやこれや気を配っている心算でも、彼女にとって有難迷惑なのかもしれない。世の人間はこの様な場合、一体どう行動に出るのだろうか。家臣にそれとなく相談する訳にもいかないが、会話の端々を拾って再構築したところ家長――つまり夫と言うものは黙っていれば良い、妻は後から追従して来るもの――らしい。が、自分はどうもその理論に賛同出来ない。互いに尊重し支え合う事こそがあるべき夫婦の形ではないだろうか。比翼連理とはその最もたる金言ではないか――とまあ、今こうして一人反駁しても意味は無いのだが。
そんな訳で自分はとぼとぼ廊下を歩いた。屋敷へ戻っても何か気が晴れる事は無く、ただ無為に時を過ごすしかなかった。どれ程の間をそうしていただろう。気付いた時には陽も傾き、障子越しに淡い橙をした光が射し込んでいる。これではいけないと頭を振った丁度その時だった。
宜しいでしょうか、と声が飛び込んでくる。断る理由も無いから当然許可を出し、声の主の入室を促した。
失礼致します、と一礼し、入って来た見慣れた顔の近習は後ろ手に襖を閉めると襟を正してから本題を切り出してきた。
「奥方様の事に御座いますが、こちらにお見えになられましたか?」
来ていないと言う旨を伝えた後、どうもその表情が気に掛かった所為か、何かあったのかと訊き出していた。
「――居ない?」
何でも散歩に出たきり戻っていない様らしい。供の者も付けず一体何処に行ったのだろうか、と困り果てた侍女に依頼され、この近習は今自分の眼前に座している訳だった。
事情を飲み込むと先ず近習を下がらせ、屋敷を出た。勿論、彼女を探す為に。確証は無いが――とにかく思い当たる場所へと駆け出して行った。





乾いた地面を踏み、ぼんやりと佇む小柄な背に近付く。丁度こちら側からは顔が見えなかったのだが、ざりと砂を均した音に反応したのだろう。くるりと猫を思わせる様な所作でこちらに顔を向けてきた。
「…………なあに」
声から滲み出る不機嫌さを隠す様子も無く、彼女は問い掛けてくる。
「随分皆探していましたよ、暗くなる前に帰りませんか」
「嫌」
あっさりと返される。
「寒くもなります、早く帰り――」
「嫌ったら嫌ッ!」
ぱしん。伸ばしかけた手を払い、言う。彼女の声には何か張り詰めたものが潜んでいる――様な気がした。
「帰る帰るって言うけど貴方達はわたしに何処へ戻って欲しいの!? 何とも思ってないじゃない!」
そんなに言うなら尾張に帰ってやるわよ――その言葉には彼女の寂しさ、複雑な立場、とにかくその眼に珠を浮かべさせる因子となる全てが詰め込んであった。
――そうか。
自分は気付けていなかった。本心を理解していないから、どれだけ上辺に気を配ってもそれが響く事なんてない。寧ろ、自分は彼女の目に見えていた上辺だけで判断していなかったか――?
そうだと言うのなら、自分は彼女に随分と酷い事をしてきたのではないか。
そう悔やんでいるのも束の間、彼女は自分の横をすり抜けて行こうとする。
「ま――待って下さいっ!」
駆け出した彼女。その方向は確か足場が不安定で――
ふらり。思った通り、体が均衡を崩して倒れようとしている。その前に何とかしなければと考えるより――行動を起こしていた。

彼女の腕を引き、そのままこちらへ引き寄せた。

――どれくらいの時が経ったのかは解らない。そう長い間では無かった様に思えた沈黙を破り、口を開いた。
「…――この小路は人が来ない分、地面が均されていないんです。だから、足元をよく見ておかないと危ないですよ」
「……解ったから、離して」
「いいえ」
自分でも何を言い出しているのか理解出来なかった。夢の中で語る様に、熱に浮かされた様に、思い付く限りの言葉を紡いだ。
「寂しい時は泣いたって良いんです。自分も落ち込む時は物凄く落ち込んで、よく周りに迷惑ばかり掛けていますから……」
「長政さま」
「迷惑掛けたって良いんです。我が儘だって言って下さい。その代わり――本心からの我が儘だけにして下さいね。此処が貴女の場所である様、自分も努力しますから」
畳み掛けるかの様に言葉を出し切った後、自分が何を言っていたのか漸く理解し――赤面した。
自分らしからぬ、いや自分にこんな台詞が言えた事に対して正直驚きを隠せないでいる自分を、彼女は普段通りの――鈴が鳴る様な笑い声を上げて見つめている。腕をそっと除け、隣へと回ってくる。
「30点」
「え?」
「長政さまにしては頑張った方だから、努力点で30点。今度は満点目指してよね」
にっと笑う彼女の悪戯っぽい笑顔に、自分は力一杯頷いてみせる。
「はい、必ず」

夕凪の湖面は黄金色に満ちていた。



(了)




---------

いい夫婦の日記念として書いてみました。久々の戦国いえーい!!←
何となく一人称で進めてみたり。こっちの方が書きやすい。
でも本当に久々で色々あやふやですが(長政様のキャラとか長政様のキャラとかry)とりあえずさらりと流して頂けるとコレ幸い。
\(^0^)/

でも夫婦って良いですよね(何を突然)
普通の夫婦を普通に書く事がこれ程眩しいとは……!!←


それでは
ここまで御一読頂き誠に有難う御座いました!

2oo9.11.13(fri)
ニシキミドリ 拝
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