題:ちゅーしよう！

島津の甘甘(?)ＳＳ。結構短いです。
破廉恥表現全く無し。むしろかけ離れてる感じです(笑)

現パロなんだか戦国なんだか判んない感じですが、一応現代。

義久はページを繰った。古い本独特の香りが鼻孔を掠める。
くっと眼鏡のブリッジを押し上げた。仕事や読書の時しか掛けない、フレーム無しの楕円形眼鏡。
部屋には心地良い静寂が満ちていた。

しかし突然、弾んだ声が背後から飛んできた。
「兄ーに者っ♪」
「ん、どうし───んんッ!?」
回転式の椅子ごと返り見た兄の唇を、義弘は優しく奪った。義久は目を見開き、僅かに離した弟の瞳を驚愕の眼差しで見詰める。
そして一瞬で瞳に冷たい炎を煌めかせて、
「何すんだ」
鳩尾目掛けて膝を振り上げた。清々しい程のクリーンヒットに、義弘の喉から潰れた悲鳴が漏れた。
腹を抑えつつ、涙目で義久を見上げる。義久は顔を背けていたが少し赤くなっていた。
「ひ、酷かよ兄者…」
「自業自得だ。突然襲う奴が悪い」
「むぅー」
また義久は体を机に向け直し、活字へ視線を落とす。

義弘は義久の背中にへばりついた。
「じゃあ突然じゃなきゃ良いんか？」
「無理だ。それより其処を退け。気が散る」
「兄者ちゅーしよ」
「無理だ。さっさと退けよ」
「取り敢えずこっち向いて」
「無理。退け」
「兄者ーぁ、ちゅーぅー」
「無理だっつってんだろこの馬鹿!!」
「おっと」
裏拳で殴ろうとした義久の手首を義弘が握った。半身だけ振り向いた義久の体を自分の方に向けさせ、義久の机に手を付く。覆い被さる格好だ。
義久は思わず身を引いたが背もたれに邪魔されて距離が取れない。間近に見る弟の紅の瞳に、浅葱のそれを揺らした。顔に熱が上るのを感じ、隠す様に俯く。

義弘は優しく低く囁いた。
「キス、して い？」
「そんなの───……訊くモンじゃねぇだろ」
義弘は笑った。
「自分が言った癖に。本当に我が儘じゃのう」
「五月蝿ぇ」
義弘につられる様に義久も少し笑った。
そして２人はどちらからともなくゆっくりと瞼を閉じ、柔らかく触れ合った。

ちゅ、と小さな音を立て、また緩慢な動きで離れる。
「…好き」
義弘は微笑みながら言った。
「大好きじゃよ」
「何だよ、さっきから…」
義久は顔を赤らめて、狼狽える様に目を泳がせた。
義弘は義久の髪を弄ぶ様に梳いた。しかし視線は義久に注がれたままだ。
「俺、兄者とキスすんの好き」
「……そうかよ」
「知っとる？ 唇って、体中で一番皮膚が薄いんじゃよ」
「………」
「ついでに神経も凄っげぇ沢山通っとる。つまり、そんだけ兄者を感じれるって事じゃ」
「…馬鹿だろ…」
「何故じゃ？ 一番兄者に近付けて、一番兄者を感じれる行為。俺は大好きじゃよ」
幼い笑顔で義弘は義久を抱き締める。
「好きじゃよ、義久」
義久は暫く逡巡した後、ぼそりと返した。
「…………俺…も」
「！」
義弘は驚いて身を離した。じっと義久を見る。
「…もっ回言って？」
「ッ……何でだよ」
「よぉ聞こえんかったんじゃ」
「嘘吐け。この距離だぞ」
「なぁ、もっ回」
「………」
義久は顔を真っ赤にさせてたっぷり数秒躊躇した。
「……………阿呆面でこっち見んな…」
そう言って義弘の目に掌を重ねて目隠しをする。そして明確な発音で告げた。

「…俺も………お前とのキスは、嫌いじゃない」



義久は、瞼を閉じて首を僅かに伸ばした。


























またもや突発的ＳＳ。ヘタレってか、馬鹿な位甘ったるい事を突然言い出す義弘が書きたかっただけ(笑)　義久は義弘につられてちょっと素直になっちゃえば良いと思う。


生物で冷点の話が出た時に思い付いたネタです。
唇は神経多いんですよー？　指先の次だったかな？　うろ覚え(笑)
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因みに、義久は清正と違って静かなツンデレタイプだと思う。
攻めに「俺の事好き？」って聞かれたら、「ばばば馬鹿か!?」ってなって最終的に「好きで悪いか!!!」とヤケクソになるのが清正。
義久は「嫌いだ」って冷たく突き放し、最後は「………好き…だよ」とぼそりと呟く感じ。成政もこっちタイプ。ツンツンデレに近いのかな？ カテゴリの名前はわかんね(笑)

兎に角、こーゆーツンデレも好きです!! ツンデレが好きです!!(知っとるわ)

お粗末様でしたっ


2009.11.07(Sut)