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脳内桃色領域。常夏前線停滞中。
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久々の赤黒SS。
お祭りできゃいきゃいする話。
吃驚する程純粋でピュアな感じですww どうした俺ww


ちりん、と、風鈴が鳴った。

「あー、暑ぃー」
机に向かっていた利家は、唐突に声を上げて後ろに倒れ込んだ。開け放たれた障子の向こう、窓枠越しに見える抜けるような青空を恨めしそうに睨む。
「あぁあぢいいいいいー…」
「五月蝿い」
その後ろに背を向け座る成政が、手を止めずに平然と返す。
「貴様が暑いとほざいた所で気温は下がらないだろう」
「んな事言ったって暑ぃんだよー」
ごろりと寝返りをうって、うつ伏せになり、成政の姿勢の良い背に向かって利家は言った。成政は苛々と言い放つ。
「だから貴様はレベルが低いというのだ。信長様が付けて下さった風鈴で体感温度は下がるだろう?」
「風鈴なんかで涼しくなる訳無ぇだろー」
「何だ? 貴様、信長様のお心遣いを無碍にする気か」
声に殺気を乗せる成政を利家はさらりと受け流す。
「変わらねぇよ。ってかアイツはそんな優しい奴じゃ──
「ッええい喚くなこの低能!! この私が今此処でその使えぬ頭を入れ換えてやる!!!」
柄に手を掛けるが早いか、成政が勢い良く振り向く。利家も上体だけ起き上がった。
「あぁ!? 何も間違った事言ってねぇだろこの馬鹿! ヘコヘコするしか能の無い奴には低能なんて言われたくねぇよ!」
「何だと貴様……喧嘩を売っているのか」
「やるならやるぜ?」
睨み合う2人。何の化学反応か、バチバチと火花が飛ぶ。
「………」
「………」

ちりん、と、風が駆けた。

途端、
「…ッはぁあぁああ……」
利家が崩れた。ひらひらと右手を振る。
「止めだ止め。喧嘩するエネルギーも涼しさも無ぇや」
「…………」
成政は無言で同意し、2人は所定位置に戻った。また膨大な書類と格闘する。
「やってもやっても仕事減らねーなぁ…」
「……」
「今日城下で祭りあるんだってよー」
「………」
「行けねーよなぁ…」
「…………」
愚痴る利家と黙る成政。利家はぼそりと継いだ。
「本当は、俺は……お前と行きたいんだぜ──」
「? 何か言ったか?」
「何もー」
「……?」
「はぁ……暑……」

ちりん、






ちりん、と、茜空が囁いた。

利家はぐったりと机に突っ伏していた。流石に疲れたのか、成政の筆も遅い。
遠くで祭り囃子が聞こえる。
「はあああ……疲──
「やー、頑張ってるかぁい?」
幼いのに可愛げの無い声が高らかに響いた。目を向けると、案の定魔王様が仁王立ちしていた。
背筋が伸びてキリリとする成政と、うんざりと余計に力の抜ける利家。
「駄目だなぁ前田君、ダレちゃってるじゃん」
「殿が無茶苦茶な量渡すからでしょ」
「なりまったんは頑張ってるじゃんか。いぬっちの倍は終わってるよ」
「ッ有難う御座います!」
また何らかの化学反応が起こったらしく、成政の顔の辺りに煌めきが飛ぶ。ビシイ、と音が出る程勢い良く、信長はその成政を指差した。
「よし、なりまったんは休憩!」
「……え…、いえ、私はまだ働けますが──」
「んーん、あとは利家がやるさ。やりすぎは禁物!」
「有難う御座います…」
まだ少し不服そうな成政に、ちょっと考え信長は続けた。
「…僕様りんごあめ欲しいな」
「はぁ?」
利家が聞き返した。
「りんごあめ」
「り、林檎飴で御座いますか…」
「お祭りやってるでしょ? 1つじゃ足りないよ、2つね」
「──はっ!」
成政は勢い良く立ち上がり駆け出した。
「うげぇ……。残り全部俺っすか」
「頑張って☆」
「はいはい、解りましたよ殿……」
利家が姿勢を直す。次の紙を手に取った。
「………って、何してんすか?」
「覗いてる」
「じゃあ手伝えよ」
「嫌」
「だろうな」
苦笑を1つ漏らし、筆に墨を追加する。
「──やっぱり良いや」
「は?」
「りんごあめ、やっぱり良いや」
「ぇ、えぇ!?」
「だからいぬっち、なりまったん止めてきてー」
「いや、仕事どうすんすか」
「後退にさせる」
「あー…明智さん……」
知らぬうちに仕事を追加された明智を一通り哀れんでから、利家は立ち上がる。
「んじゃ、行ってきます」
「いぬっち」
「ん?」
信長の後ろ姿を振り返って見る。
「キミ達の今日の仕事終わりだから、ゆっくりしてきて良ーよ」
「へ?」
信長は振り返ってニッと笑った。
「なりまったん、何だかんだ言っていぬっちの事好きだと思うよ」


ちりん、と、空気が揺れた。


「─な──」
「んじゃ!」
僕様の目は誤魔化せないのさっ♪──適当な節でそう歌いながら、信長はスキップで去った。
「何だよ、それ──」

ちりん、と、風も無いのに風鈴の音がした──気がした。






「佐々!」
「前田?」
「やっと見つけた……って、もう買っちまったか」
「? 何がだ? それより貴様仕事はどうした」
「りんごあめはやっぱり要らないから、なりまったん止めてきて☆っつー殿の命令でな」
利家は成政が持っていた赤い糖分の塊を1つ取り上げた。ちょっと舐める。
「ホラ勿体無ぇだろ。お前も食えよ」
「………」
成政は大人しく咥えた。
「お、隣の屋台射的じゃねぇか。俺やろー。佐々もやれよ」
「何故私がそんな子供じみた事を…」
「何だよ射的出来ねぇのか? そんなんじゃ黒母衣衆も底が知れるぜ」
「何だと?」
成政は睨んだが、利家は無視して屋台に近寄った。朗らかに言葉を交わす。
「おっちゃん、幾らー? え? いや、コイツはビビってやんないから俺だけだ」
屋台の親父に金を手渡す。鉄砲と3つの弾を借りた。
軽い音と共に的が倒れる。的の大きな順に3つ倒した。
隣にいた子供が羨ましそうに見ていたので、1つやった。
「どうよ」
そう笑いかけるより早く、バアンと机が鳴り響いた。成政が金を叩きつけたのだ。
「私もやる。貸してくれ」
殺気までもを含んだ真剣な眼差しで的を見つめる。息を止め、引き金を引く。

「……!!」

周りの人が歓声を上げざわついた。倒した的で隣の的も落としたのだ。矢継ぎ早に打ち、3発で7つの的を取ってしまった。驚く利家に成政は笑む。
「どうだ」
「いい気になるなよ、まだ余興の段階だぜ」
「ふん、負け惜しみを」
「親父、もう一回!」

利家は銃を借りたが、4つのぬいぐるみを落としただけだった。成政の嘲笑が降る。
「ふっ……赤母衣衆も程度が知れるな」
「ンだと!? お前が取りやすい奴を全部取っちまうから不利だったんだよ! 親父、もっ回!!」
「何度やろうと同じだ。犬にも解る様に格の差を見せてやる。おい、私にももう一回だ──…」






結局射的の的を全て取りきって、金魚を計数十匹掬い、一抱え程の水鞠を釣ってやっと一息付いた。
「金幾ら使ったよ? 俺とした事が……とんだ無駄遣いだぜ」
「貴様が悪いのだろう? こんなに荷物を作ってどうする気だ」
「お前……人の所為かよ!? お前だって挑発してきたじゃねぇか」
「最初に仕掛けたのは貴様だ!」
「意地張って乗るお前もお前だろ!」
「貴様いい加減に──ひあッ!?」
いきなり立ち上がった成政は、足元に転がしていた水鞠を踏みつけて派手にひっくり返った。
利家は噴き出す。
「ぷッくく…くくく……ッははははっ!」
「な…そこまで笑うか貴様!」
「だって、あの佐々がひっくり返っ……しかも『ひあっ』って……! ッあははははははっ!」
「五月蝿いッ!!」
佐々は顔を真っ赤にして睨めつけた。
利家は涙を拭い、茶化す様に手を差し伸べる。
「大丈夫かよー。割れた水鞠の水でまた滑るなよ?」
「大丈夫だッ」
そう言ったが、成政は暫く躊躇して利家の手を取った。利家は意外そうな顔をした。てっきり払うと思ったからだ。
そんな利家を知ってか知らずか、成政が睨む。
「何 阿呆面を晒しているのだ。貴様を杖代わりにして悪いか」
「いや、悪くねぇけど……」

『なりまったん、何だかんだ言っていぬっちの事好きだと思うよ』

幼なじみの声が反復される。
ちりん、と、涼しげな響きも蘇った。

「おい前田、呆けているなら帰れ」
「酷ぇな…」
チラリと成政の顔を覗き見た。まだ少し頬が染まっている。
「さぁそろそろ私は帰る…」
「あ!」
「ん?」
「林檎飴、お前落としてるぞ」
「あぁ……」
色々と白熱していて食べ忘れていた林檎飴を、さっき落としてしまったようだ。
利家は思い出したように自分の飴にかぶりつく。
「欲しいっつってもやらねぇよ?」
「貴様に与えて貰う必要は無い」
「さいですかー」
「ただ、」
バッと利家の手から赤い飴を取り上げる。
「自分では取るがな?」
ペロリと舐め上げた。利家は手を伸ばす。
「何でだよ、お前そんなに甘党じゃねぇじゃん」
「貴様の得意げな顔を見ると奪いたくなる」
「意味解んねぇよ」
「知らん」
「それに、それ間接キスだぞ」
「………!!」
成政は舌を止めて、顔を赤く染め上げた。利家を睨んで言葉にならぬ言葉を繰り返す。
「な、な、な……ッ」
「そうだ──取り合うなら、こうすれば良いだろ?」
利家は飴を一口かじり、そのまま成政の頬に手を滑らせた。逃さない様に捕まえて此方を向かせた。ぐっと顔を近付ける。
成政の目が見開かれた。
「へ──?」




ちりん、と、


何処かで夏の声がした。




ふっと2人が離れる。
「……前…田……?」
「佐々、俺──
「何をしている貴様はぁああああ!!!」
「ぐへぁッ!?」
利家の腹に綺麗にめり込む成政の拳。利家は派手に倒れた。
「きききさっきさっ貴様っ!!!」
耳まで染め上げて半狂乱になる成政。予想外な展開にポカンと見上げる利家。
「俺、告る前に振られた……?」
「わわわ私は帰る!!!」
「え ちょ、待っ!?」
成政はそう言うや否や、足早に駆け出した。
「せ、接吻をするなら前もって言え、あの馬鹿! 初めて、だったんだ──」
ブツブツ1人呟く。
「──…………私が奴に惚れていたと………気付かれただろうか──…」
成政の声はもう、1人残された利家には届いていない。
成政の独白も知らず、利家は落ち込んでいた。
「ぽっしーの馬鹿! 何が『何だかんだ言っていぬっちの事好きだと思うよ』だ! 殴られたじゃねぇか!」

2人の気持ちは、まだ交わらない。
そんな2人を見てとある殿は楽しんでいたと言うのは、また別の話。



ちりん、























ハイどーも。麗夢です。
師匠兼相方(今は半隠居中)の方に先日『レイム』と読まれた麗夢です\(^O^)/
あんた一体何時から俺の相方やってんだ! 1、2年ずっと勘違いしてたのか! そして周りのみんなも『レイム』だと思ってた方居すぎ!(涙)
『ライム』ですよ皆様。柑橘類の緑のアイツです。not レイム but ライム!



さて。久々のSS、久々の赤黒で御座います!
信様にはお見通し☆な話を書きたかっただけってのは此処だけの秘密(笑) というか、フラフラしたキャラだけど実は2人の恋愛に協力してたりする信様の話。麗夢的には信様中心のSS(何処がだ)。

信様好きです信様。破天荒魔王。師匠良いセンスしてます、俺の名前間違えるけど(まだ引きずるのか)



また織田軍書きたいなー。今回後退とか名前とかでしか出なかったハg……ではなく明智さんとか、滝川君も書きたいし浅井さんも出したい。
織田軍はイベントで書きやすいと思いますハイ(〇´∀`〇) だって基本的にハチャメチャだから←
まぁこれは次回予告ではなく、あくまで希望ですから。悪魔で(ぇ?)。


次回は織田になるのか九州になるのかはたまたbsrになるのか分かりませんが、気長に待っていて下さい!

では



   2009.7.18(SUN)




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